
ポルスカ・グルパ・エネルゲティチュナ(PGE Polska Grupa Energetyczna S.A.)は、ポーランド最大の国有電力会社。国内の発電の40%以上、および熱供給を担う垂直統合型のエネルギー企業。時価総額は約66億ドル〜75億ドル(2026)。
ポルスカ・グルパ・エネルゲティチュナの起源は、1990年8月2日に設立されたポルスキェ・シェチ・エレクトロエネルゲティチュネ(Polskie Sieci Elektroenergetyczne S.A.、略称PSE)に遡る。同社はポーランド電力網株式会社を意味する国営企業として、社会主義体制崩壊後の市場経済移行期にあったポーランドで、送電網を中心とする国家電力インフラの管理と近代化を担う組織として発足した。当時のポーランドでは、旧共産圏に共通する非効率な国営エネルギー事業体制からの脱却が急務とされており、PSEの設立はその再編過程における基礎的な一歩として位置づけられる。設立後のPSEは長らく送電網の運用と管理を主たる業務とし、発電や配電を担う各地域の事業体とは別個の存在として機能していた。
2007年、PSEグループから送電系統運用者(Transmission System Operator)部門であるPSE-Operatorが分離された。この再編は、発電・配電・送電といった機能を明確に切り分け、欧州連合の電力市場自由化方針に沿った競争的な市場構造を整えるための措置であった。そして同じ2007年5月9日、PSE、PGEエネルギア(PGE Energia SA)、およびBOTグルニツトフォ・イ・エネルゲティカ(BOT Górnictwo i Energetyka S.A.)の3社が統合され、ポルスカ・グルパ・エネルゲティチュナが正式に発足した。この統合により、発電、褐炭・石炭採掘、配電、電力小売という電力バリューチェーンの主要な機能が単一のグループの下に集約され、ポーランド最大の電力事業体としての基盤が築かれた。本社はワルシャワに置かれ、国庫(Skarb Państwa)が支配株主として経営の主導権を握る体制が、この時点で確立している。
2009年11月6日、PGEはワルシャワ証券取引所(Warsaw Stock Exchange)に新規株式公開(IPO)を行い、上場企業としての歩みを開始した。翌2010年3月19日には主要株価指数であるWIG20の構成銘柄に採用され、ポーランド資本市場における代表的銘柄としての地位を確立した。上場後も国庫は過半の株式を保有し続けており、2014年7月9日時点での国庫の持株比率は58.39パーセントに達していた。上場からしばらくの間、PGEは褐炭火力および石炭火力発電を中心とする伝統的な電源構成のもとで事業を拡大し、ベウハトゥフ発電所(Bełchatów Power Station)をはじめとする大規模火力発電設備の運営を通じて、ポーランド国内電力供給の約4割を担う存在へと成長した。同社はまた、10基を超える配電事業会社と電力小売事業会社を傘下に持つ複合的な企業集団としての体制を整えていった。
2009年1月15日、PGEはポーランド国内に原子力発電所2基を建設する計画を発表し、2010年には特別目的会社PGE EJ1を設立して原子力発電事業に着手した。同社はまたリトアニアのヴィサギナス原子力発電所(Visaginas Nuclear Power Plant)計画にも関与していたが、この国内原子力事業は後に国庫へ移管され、2021年にポルスキェ・エレクトロヴニェ・ヤドロヴェ(Polskie Elektrownie Jądrowe)として再編されている。一方でPGEは2018年5月、長らく建設が停滞していたジャルノヴィェツ原子力発電所(Żarnowiec Nuclear Power Plant)の再開ではなく、洋上風力発電への投資を選択する方針を示した。2020年10月には2030年を目標年、2050年を展望年とする新たな成長戦略を公表し、洋上・陸上風力、太陽光発電、送配電網整備、低排出型熱供給を重点分野に据える一方、石炭火力事業と石炭取引からの段階的な撤退を掲げるなど、脱炭素化に向けた方針転換を鮮明にした。
2022年から2023年にかけて、PGEは投資ファンドCVCキャピタル・パートナーズ(CVC Capital Partners)が保有していたPKPエネルゲティカ(PKP Energetyka)の買収を進め、2023年4月3日にその全株式取得を完了した。同社は翌4月4日にPGEエネルゲティカ・コレヨヴァ(PGE Energetyka Kolejowa)へと社名変更され、鉄道向け電力供給という新たな事業領域がグループに加わった。2024年にはポーランド北部のジャルノヴィェツにおいて、出力最大263メガワット、蓄電容量900メガワット時以上という欧州最大級の蓄電施設を建設する計画も公表されており、バルト海沿岸の洋上風力発電をはじめとする再生可能エネルギー電源の変動を調整し、国全体の系統安定性を高める狙いが示されている。
第1版:2026-09-08.
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