
ブミタマ・アグリ(Bumitama Agri Ltd.)は、インドネシアを拠点に大規模なアブラヤシプランテーション(農園)を運営する、東南アジア大手のパルプ・パーム油生産企業。シンガポール証券取引所(SGX)に上場。時価総額は約26.4億米ドル(2026)。
ブミタマ・アグリ(Bumitama Agri Ltd.)は、しばしば「ハリタ・グループ(Harita Group)傘下の企業」と紹介されるが、正確には同グループの完全子会社ではなく、創業家であるリム(Hariyanto)一族がウェルポイント・パシフィック・ホールディングス(Wellpoint Pacific Holdings Ltd)を通じて過半数の議決権を握る、いわば中核出資先という位置づけにある。ハリタ・グループ自体は1915年にリム・チュ・キン(Lim Tju King)が創業し、その子であるリム・ハリヤント・ウィジャヤ・サルウォノ(Lim Hariyanto Wijaya Sarwono)の代に木材事業や、1985年のケリアン・エクアトリアル・マイニング金鉱開発(リオ・ティントとの合弁)、1988年のランナ・ハリタ石炭事業などを通じて資源分野へと多角化を遂げた華人系財閥である。ブミタマ・アグリは、このハリタ・グループが手掛けるパーム油事業を担う中核会社として設立されたものであり、資本面ではグループの強い影響下にありながらも、法的にはあくまで別法人として運営されている点に留意する必要がある。
ブミタマ・アグリの直接的な起点は1996年である。同年、リム・グナワン・ハリヤント(Lim Gunawan Hariyanto)が中心となり、中央カリマンタン州において1万7500ヘクタール規模の土地権益を取得したことがパーム油農園事業の出発点となった。1998年には実際の植栽活動が開始され、同年、リム・グナワン・ハリヤントはグループの執行会長兼最高経営責任者に就任している。2003年には自社初となるパーム油搾油工場が中央カリマンタンで稼働を開始し、時間当たり45トンの処理能力を備えた。2007年には植栽面積が5万ヘクタールを突破するとともに、マレーシアの大手パーム油複合企業であるIOIコーポレーション(IOI Corporation Berhad)が、傘下のオークリッジ・インベストメンツ(Oakridge Investments Pte Ltd)を通じて約33%の株式を取得し、第2位株主として資本参加した。この提携により、ブミタマ・アグリはIOI側の技術支援や搾油・精製・国際販売網を活用できる体制を得た一方で、両社は取締役会および経営陣を明確に分離しており、経営の独立性は維持される形が取られた。
植栽面積が11万8000ヘクタールに達した2012年4月12日、ブミタマ・アグリはシンガポール証券取引所メインボードに新規上場を果たした。新規発行株式2億9760万株、総額1億9520万米ドルに相当する株式が売り出され、発行済株式数の16.9%が公開された。上場後もハリヤント一族は約51%、IOIグループは約31%の株式を保有し続け、支配的な株主構成に大きな変化は生じなかった。上場に際してはウィルマー・インターナショナル(Wilmar International)も一部株式を取得しており、パーム油業界内の主要企業同士が資本面でも結びつく構図が形成された。
上場後のブミタマ・アグリは急速な事業拡大を続け、搾油工場は2012年の6カ所から2016年には13カ所へと増加し、生鮮果房(FFB)生産量も2010年の76万トンから2016年には218万トンへと拡大した。もっとも、この急成長の過程では土地開発をめぐる問題が表面化した。2013年から2014年にかけて、環境NGOの調査により、経営陣が表明していた森林伐採停止の方針が現場では十分に履行されていなかったことが指摘され、持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)から複数回にわたり作業停止命令(ストップワークオーダー)を受ける事態となった。これを受けて主要な買い手企業からも是正を求める圧力が強まり、ブミタマ・アグリは土地利用状況の見直しや、問題のある子会社であるPTハティプリマ・アグロからの資本引き上げ、供給契約先であったPTグミラン・マクムル・スブールとの契約解除など、供給網の適正化を迫られることとなった。さらに2016年には、第2位株主であるIOIグループ自体が別件でRSPOの会員資格を一時停止される事態が発生し、複数の国際消費財企業がIOIとの取引を停止したことでブミタマ・アグリへの波及が懸念された。これに対し同社は、IOIの持株比率が3割を超えるものの取締役会・経営陣は完全に独立しており、自社の事業運営に直接の影響は生じないとの立場をシンガポール証券取引所に対して公式に表明している。
こうした批判を受けて、ブミタマ・アグリは2015年以降、サステナビリティ対応を経営上の重要課題として位置づけるようになった。同年11月にはインドネシア国営石油会社プルタミナ(Pertamina)向けにバイオディーゼル2万トンの供給契約を締結し、パーム油の川下分野にも事業を広げている。2018年以降は独立系および提携小規模農家(プラズマ小農)を対象としたRSPO認証取得支援を本格化させ、2020年には野生動物の生息回廊を保全する「フライフォレスト(FlyForest)」プロジェクトを試験的に開始するなど、農園開発と自然保護を両立させる方針を打ち出した。2021年には西カリマンタンに新たに2基の搾油設備を増設し、合計で時間当たり100トンの処理能力を追加している。翌2022年には創業25周年および上場10周年の節目を迎え、配当性向55%(配当利回り換算で約14%)という過去最高水準の株主還元を実施した。2023年にはRSPOより保全分野における卓越賞(Excellence Award in Conservation Leadership)を受賞するなど、対外的な評価も改善が見られるようになっている。
第1版:2026-09-11.
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