ビットカブ

概要

ビットクブ(Bitkub Capital Group Holdings Co., Ltd.、運営子会社:Bitkub Online Co., Ltd.,タイ)はタイ・バンコクに本拠を置く暗号資産取引所・ブロックチェーン企業グループである。2018年の創業以来、タイ国内の暗号資産市場を牽引し続け、東南アジアを代表するデジタルアセット企業へと成長を遂げている。

ジラユット・スルプシリソーパによる創業前史

ビットクブの創業者であるジラユット・スルプシリソーパ(Jirayut Srupsrisopa、愛称「Topp」)は、オックスフォード大学で経済・金融を学んだタイ有数の暗号資産起業家である。ビットクブ設立以前、彼はタイ最大級のビットコインウォレット事業者「Coins.co.th」を共同創業した。同サービスはフィリピンを拠点とするCoins.phと提携関係にあり、2019年にインドネシアの配車サービス大手Go-Jek(現Gojek)に約7,200万米ドルで買収された。

このCoinss.co.th売却以前から、ジラユットはタイの証券取引委員会(SEC)が主催する規制政策に関するコンテストに参加し、暗号資産取引所の規制枠組みを提案して受賞した。この受賞経験が監督当局との関係構築につながり、それがビットクブ創業の直接的な礎となった。タイ政府が暗号資産の規制整備を本格化させる流れを見据えた彼は、合法的かつ持続可能な暗号資産取引プラットフォームの構築へと踏み出した。

創業期(2018年)

ビットクブは2018年2月5日に設立。当初の登録資本金は5,000万バーツであり、タイの大手モバイル通信事業者DTAC(現TRUE)の支援を受けていたと報じられている。

2018年中に取引所としての運営を開始し、急速に利用者を獲得した。2018年末時点では、当時タイ最大の暗号資産取引所であったBX.in.thに次ぐ、国内第2位の取引所にまで成長している。売上高は同年に約300万バーツと小規模ながら、翌年以降の急成長の足がかりを固めた段階であった。

ライセンス取得と規制対応(2019年)

2019年1月、タイ財務省が導入したデジタル資産サービスに関する規制の下、ビットクブはタイ証券取引委員会(SEC)からデジタル資産取引所の営業ライセンスを取得した最初の4社のうちの一社として認定された。この規制対応の早さは、同社の競合他社に対する重要な差別化要因となった。

同年、国内最大の競合であったBX.in.thが事業を停止したことにより、ビットクブはタイの暗号資産市場において事実上の筆頭取引所の地位を確立することとなった。2019年の売上高は約3,000万バーツに増加し、前年比で約10倍という急成長を遂げた。

急成長期(2020年〜2021年前半

2020年後半からのビットコイン価格の急騰を背景に、タイ国内の暗号資産投資への関心が爆発的に高まった。この波に乗ったビットクブは売上高を2020年に約3億バーツ(前年比約10倍)、さらに2021年第1〜第3四半期だけで約32億8,000万バーツへと伸ばした。

ユーザー数も急増し、2021年4月には登録口座数が100万口座を突破し、同年7月にはわずか3ヶ月で倍増となる200万口座を達成した。ビットクブのウェブサイトは、この時期にタイ国内で最も訪問者数の多い金融ウェブサイトとなった。

しかし、この急成長は、システムへの過負荷という深刻な問題を引き起こした。2021年1月、取引量の急増によってシステム障害が多発し、サービスが一時停止される事態となった。SECはビットクブに対してシステム問題の改善を命じ、安定性が確認されるまでの間、新規ユーザー登録の停止を指示した。この措置は2021年4月に解除された。

Bitkub Chainの誕生と自社ブロックチェーンの展開(2021年)

2021年4月、ビットクブはタイ初の独自ネイティブブロックチェーン「ビットクブ Chain(KUB Chain)」の最初のブロックを生成することに成功した。当初はProof-of-Authority(PoA)コンセンサスで稼働を開始し、タイ国内に向けたブロックチェーンインフラの整備が本格的に幕を開けた。

同チェーン上では公式NFTゲーム「Morning Moon Village」が提供され、ブロックチェーンゲームのタイ市場への普及促進に貢献した。また、次世代開発者の育成を目的とした「ビットクブ Tech Challenge」も開始された。

同年12月には、SECがビットクブに対し合計390万バーツの罰則を科した。これはシステム障害、不十分な顧客サポート、取引ルールの違反、顧客資産の不適切な管理を含む8つの違反事項によるものであった。

ユニコーン企業への昇格とSCBXとの資本提携交渉(2021年11月)

2021年11月、タイ最大手の商業銀行グループであるサイアム・コマーシャル・バンク(SCB)の持株会社SCB Xが、Bitkub Onlineの株式51%を178億5,000万バーツ(約5億3,500万米ドル)で取得する合意を発表。これによって、ビットクブの企業価値は10億米ドルを超え、タイにおけるFintech分野初のユニコーン企業として認定された。

しかし、この大型取引は翌年に暗転することとなる。

SCBXとの合意破棄と市場の調整(2022年)

2022年8月、SCB Xはビットクブへの出資計画の撤回を発表。規制上の未解決問題が合意の障壁となったことが主な理由とされている。タイSECが提示した条件への対応の複雑さや、グローバルな暗号資産市場の下落局面(クリプト・ウィンター)も背景にあったとみられる。

技術面では、2022年にBitkub ChainのコンセンサスアルゴリズムがPoAからProof-of-Stake-Authority(PoSA)へと移行し、ネットワークの分散性とセキュリティが強化された。同年の Bitkub Chain上のトランザクション数は約4億件に達し、NFT流通枚数は約2,100万枚を記録した。またタイICTアワード2022においてブロックチェーン部門の技術賞を受賞した。

2022年末時点のビットクブの国内市場シェアは約75.45%を維持しており、市場リーダーとしての地位は揺るぎないものであった。

事業の多角化と技術深化(2023年)

2023年には、Bitkub ChainのコンセンサスがPoSAからProof-of-Stake(PoS)へとさらに進化し、トランザクション効率のさらなる向上が図られた。また「Bitkub NEXT 2.0」(ウォレット・ロイヤルティプラットフォーム)および「Bitkub NFT 2.0」が相次いでリリースされた。

さらに、Bitkub Coin(KUB)に関してはホワイトペーパー第2版(V2)が公開されるとともに、流通供給量の89%をバーン(焼却)するという大規模なトークノミクス改革が実施された。これはKUBトークンの希少性と長期的な価値の安定化を狙ったものである。

英国規格協会(BSI)によるISO/IEC 27001認証(情報セキュリティマネジメント)の取得も果たし、国際的なセキュリティ基準に沿った運営体制の整備が進んだ。創業5周年という節目を迎えた年でもあり、同社はその歩みを広く社内外に発信した。

さらなる成長と将来展望(2024年〜)

2024年4月時点でBitkub Chainは累計約47億7,800万件のトランザクションを処理し、ウォレットアドレス数は約235万、エコシステム上のプロジェクト数は82件に達した。Bitkub NFTプラットフォームではNFTのミント数が約307万枚を超えた。

上場計画については、当初2023年の株主向け書簡においてタイ証券取引所(SET)への国内上場を目指す方針が示され、2024年4月時点ではフィナンシャルアドバイザーの選定作業が進められていた。しかし2025年にSET指数が約30%下落し、同年の新規上場銘柄の平均騰落率がマイナス12%超という低迷を記録したため、国内上場計画は事実上棚上げとなった。

代替案として、ビットクブは2025年11月、香港証券取引所(HKEX)への上場を早ければ2026年に実施する可能性を検討していると報じられた。

第1版:2026-06-03.



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