
バーティブ・ホールディングス(Vertiv Holdings Co.)は、データセンターや通信ネットワーク向けの電源管理と冷却(熱管理)システムを提供する世界的なデジタルインフラ機器メーカー。米・オハイオ州ウェスターヴィルに本社を置く。機器を売るだけでなく、ラック一式の統合モジュールや、ハードウェアを監視するソフトウェア、世界中のエンジニアによるライフサイクル管理・メンテナンスまでを一気通貫で提供している。また、NVIDIAなどのAI半導体需要に直結する企業として、業績は急成長を遂げている。時価総額は約1,012億ドル(2026)。
バーティブの源流は1946年、米国オハイオ州コロンバスに遡る。ラルフ・リーバート(Ralph Liebert)がキャピトル・リフリジレーション・インダストリーズ(Capitol Refrigeration Industries)としてこの事業を興し、当初は冷凍・空調関連の製造を手掛けていた。1965年、同社はリーバート・コーポレーション(Liebert Corporation)へと社名を改め、コンピュータールーム専用空調機器の分野で世界初のメーカーとなった。黎明期のコンピューターは発熱量が大きく、安定的な稼働のためには専用の温度・湿度管理が不可欠であり、リーバートはこの需要に応える形で成長を遂げた。同社はその後、アイルランドのコークに海外初の生産拠点を設けるなど、国際展開も進めている。
1987年、リーバート・コーポレーションは米国の総合電機大手エマーソン・エレクトリック(Emerson Electric Co.)に買収され、同社の完全子会社となった。2000年、エマーソンは電力・熱管理などの重要インフラ関連事業を統合し、エマーソン・ネットワーク・パワー(Emerson Network Power)という事業ブランドを新設した。これにはリーバートに加え、電源切替装置を手掛けるASCOなど既存の買収事業も組み込まれた。以降の10年間で、エマーソン・ネットワーク・パワーはアバンシス(Avansys)、マルコーニ(Marconi)の屋外設備・電源システム事業、筐体システムを手掛けるドイツのクナー(Knürr AG)、KVMスイッチやIT管理ソフトウェアを手掛けるアボセント(Avocent)、さらには英国のクロライド・グループ(Chloride Group)など、数多くの企業買収を通じて事業領域を拡大した。2007年には、データセンターのエネルギー効率化モデルであるエナジー・ロジック(Energy Logic)を発表し、業界内での技術的な存在感を高めている。
2016年8月、エマーソンは非中核事業とされたネットワーク・パワー事業を、投資会社プラチナム・エクイティ(Platinum Equity)に売却する契約を発表した。取引総額はおよそ40億米ドルとされ、同年12月1日に売却手続きが完了。これにより、長らくエマーソンの一事業部門であった同社は独立した企業体となり、新たにバーティブ(Vertiv)という社名を採用した。この名称は「頂点」を意味するバーテックス(vertex)と、「活動的」を意味するアクティブ(active)を組み合わせた造語とされる。独立後の最高経営責任者にはロブ・ジョンソン(Rob Johnson)が就任し、データセンターや通信ネットワークなど、デジタルインフラの継続性を支える事業への特化が進められた。
プラチナム・エクイティ傘下での再建を経て、バーティブは2019年12月、ゴールドマン・サックス・グループ関連会社と元ハネウェル最高経営責任者デビッド・コート(David M. Cote)が共同で設立した特別買収目的会社、GSアクイジション・ホールディングス(GS Acquisition Holdings Corp)との事業統合を通じて株式を公開する方針を発表した。この手法により、従来型の新規株式公開の手続きを経ずに証券取引所への上場を実現する形が取られた。統合は2020年2月6日にGSアクイジション・ホールディングス株主の承認を得て、同月10日に完了し、社名はバーティブ・ホールディングス・コー(Vertiv Holdings Co.)に変更された。同社株式はニューヨーク証券取引所にティッカーシンボルVRTとして上場し、取引開始日の終値は13.12米ドルであった。取引完了時点で、プラチナム・エクイティが発行済み普通株式のおよそ38パーセントを保有し、デビッド・コートは執行会長に就任した。この上場により、バーティブは重要デジタルインフラに特化した純粋事業会社として、資本市場からの資金調達力を大きく高めることとなった。
上場後もバーティブは積極的な買収戦略を継続した。2021年には、電源スイッチギアなどを手掛ける英国のE&Iエンジニアリング・グループ(E&I Engineering Group)を約20億米ドルで買収し、電力供給インフラの技術基盤を強化している。並行して、クロアチアでの新工場開設など生産体制の拡充も進められた。2020年代半ば以降、人工知能関連の投資拡大に伴いデータセンター需要が急速に高まったことは、バーティブの事業環境に大きな追い風となった。高密度化するサーバーラックの冷却需要に対応するため、同社は液冷技術を持つ複数の企業を相次いで買収し、電源分配や熱管理における製品ラインナップを拡充している。
第1版:2026-09-10.
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