トップグローブ

トップグローブ[Top Glove Corporation Bhd.,マレーシア].
時価総額[2025]:約12億7,000万ドル.


トップグローブは, マレーシアを代表する工業用および医療用手袋の製造企業であり, 世界最大の手袋メーカーとして知られている企業である.その本社はマレーシア・セランゴール州シャー・アラムに所在し, 1989年にリム・ウィーチャイ[Lim Wee Chai]によって創業された.当初はわずか1つの工場と1つの生産ラインから事業を開始したが, 品質管理と効率的な大量生産体制を武器に急速な成長を遂げた.

1990年代後半から2000年代初頭にかけて, 同社はマレーシア国内および近隣諸国を中心に生産拠点を拡大し, 2001年3月にマレーシア証券取引所[ブルサ・マレーシア]メイン市場に上場した.上場によって得た資金を基盤に設備投資を加速し, 天然ゴム[ラテックス]およびニトリル手袋の分野で世界的なシェアを拡大した.特に2000年代後半以降, 医療分野における衛生需要の増大, 感染症対策の強化, 新興国における医療インフラ整備の進展とともに, 同社の製品は国際市場で広く採用され, 北米, 欧州, アジア太平洋地域を中心に販売網を形成した.2010年には世界最大の手袋メーカーとしての地位を確立し, 世界の手袋生産量の約26%を占めるに至った.

同社は積極的な企業買収を通じて規模を拡大してきた.2011年にラテックス手袋メーカーのAdventaを買収し, 2018年には外科用手袋メーカーのAspion Sdn. Bhd.を取得するなど, 業界再編を主導した.マレーシア国内に40工場以上を保有するほか, タイ, 中国, ベトナムに生産拠点を展開し, 年間生産能力は約1,000億枚に達している.製品ラインナップは天然ゴム手袋, ニトリル手袋, ビニール手袋, ポリエチレン手袋など多岐にわたり, 医療用途のみならず食品加工, 清掃, 工業用途など幅広い分野に供給している.

2020年の新型コロナウイルス感染症の世界的流行は, トップグローブにかつてない追い風をもたらした.世界的な医療用手袋の需要急増を背景に, 同社の売上高と純利益は過去最高水準に達し, 2021年初頭には時価総額が一時700億マレーシア・リンギット[約170億米ドル]を超え, マレーシア最大の時価総額企業となった.2021年度の純利益は約78億リンギット[約18億米ドル]に達し, 前年比で数倍の増益を記録した.株価も急騰し, パンデミック以前と比較して4倍以上の水準に達した局面もあった.

しかし, パンデミック収束後の需要減退と供給過剰, 在庫調整, 価格下落により, 業績は急速に調整局面へと移行した.2022年以降, 手袋の平均販売価格はパンデミック時のピークから大幅に下落し, 同社の四半期利益は急減した.2023年には複数の四半期で赤字を計上するなど, 厳しい経営環境に直面した.

さらに深刻な問題として, 労働環境に関する国際的批判が同社の評判と事業に大きな影響を与えた.2019年から2020年にかけて, 米国税関・国境警備局[CBP]は, トップグローブ製品に対し強制労働の疑いがあるとして輸入差し止め命令を発出した.具体的には, 移民労働者に対するパスポートの没収, 過度な残業, 劣悪な宿舎環境, 採用手数料の不当負担などの問題が指摘された.この措置により, 米国市場への輸出が一時的に停止され, 同社は国際的な人権団体や投資家から厳しい監視下に置かれた.

これらの批判を受け, 同社は労働環境の改善に着手し, 第三者監査の受け入れ, 採用手数料の全額返還, 宿舎の改善, 労働時間の是正などの改革を実施した.2021年9月にCBPは輸入差し止めを正式に解除し, 米国向け輸出が再開された.しかし, この一連の問題は企業イメージに深刻な損傷を与え, ESG[環境・社会・ガバナンス]の観点から, 多くの機関投資家が同社への投資を見直す契機となった.

それにもかかわらず, トップグローブは依然として世界の手袋製造産業における中核的存在である.同社は持続可能な製造プロセスへの転換や, 自動化・AI技術の導入による生産効率向上を進めており, 環境負荷低減と人権配慮を掲げた「責任ある製造業」のモデル企業となることを目指している.具体的には, 太陽光発電設備の導入, 水資源の再利用, 廃棄物削減, ISOおよび環境認証の取得などを推進している.また, 従業員福祉の向上, 多様性の尊重, 地域社会への社会貢献活動なども強化しており, 同社はポスト・パンデミック時代のグローバル衛生産業を牽引する企業として再出発を図っている.

第2次トランプ政権が中国製の医療・手術用ゴム手袋の輸入関税を引き上げたことでマレーシア製への代替が進み,2025年8月期には販売数量は前期比55%増,売上高は前期比39%増の34億8,941リンギットとなった.これにより,2024年8月期の6,487リンギットの赤字から黒字へと転換.



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