
スクロジェン(Sucrogen Limited)は、かつてオーストラリアに存在した同国最大手の製糖・再生可能エネルギー企業。現在はウィルマー・インターナショナルの完全子会社として、ウィルマー・シュガー・オーストラリア(Wilmar Sugar Australia)に社名変更されている。ウィルマーがパーム油(植物油)だけでなく、世界の砂糖メジャーへと躍進するきっかけとなった極めて重要な企業。
スクロジェンが誕生したのは2009年のことであるが、その事業の源流は1855年1月1日、オーストラリア・シドニーにおいて実業家エドワード・ノックスが設立したコロニアル・シュガー・リファイニング・カンパニー(Colonial Sugar Refining Company、略称CSR)にまで遡る。破綻したオーストララシアン・シュガー・カンパニー(Australasian Sugar Company)の資産の一部を継承するかたちで発足した同社は、無限責任のパートナーシップとして組成され、当初は輸入原糖の精製を手がける事業体であったが、1860年代末にはニューサウスウェールズ州北部において自社製糖工場の建設に着手し、原料の川上調達へと事業を広げていった。1880年代にはフィジーへも進出して製糖事業を展開し、1887年にはニューサウスウェールズ州においてコロニアル・シュガー・リファイニング・カンパニー・リミテッド(The Colonial Sugar Refining Company Limited)として株式会社化された。以後、同社はクイーンズランド州やフィジーにおける製糖業でほぼ独占的な地位を築き、20世紀を通じてオーストラリアおよび南太平洋地域の砂糖産業を代表する企業として成長を続けた。
第二次世界大戦後、同社は建材事業やセメント事業、アルミニウム事業などへと多角化を進め、1973年には社名からコロニアル・シュガー・リファイニング・カンパニーの名を外し、CSRリミテッドへと改称した。この時点で砂糖事業はもはや同社の唯一の柱ではなく、複数の産業分野にまたがる複合企業としての性格を強めていったのである。
CSRは2000年代後半、砂糖・再生可能エネルギー事業と建材事業という性格の大きく異なる二つの事業を切り離す方針を固め、2009年12月、分離対象となる砂糖・再生可能エネルギー部門の新名称としてスクロジェンを採用することを発表した。当初は株主総会での承認を経たうえで独立した上場企業として分離(デマージャー)する計画であったが、この過程で中国の光明食品集団(ブライト・フード・グループ)などから買収提案が寄せられたこともあり、CSRは最終的に単独上場という選択肢を退け、2010年7月5日、シンガポールのウィルマー・インターナショナルに対してスクロジェンを直接売却する契約を締結したことを発表した。取引価格は企業価値ベースで17億5000万オーストラリアドル(当時のレートで概ね15億米ドル前後)とされ、同年12月22日に売却手続きが完了した。この売却により、CSRは砂糖事業と建材事業という性格の異なる二つの事業をきれいに分離するという当初の目的を、単独上場ではなく事業売却という形で達成したのである。
この時点でのスクロジェンは、クイーンズランド州において8か所の製糖工場(ハーバート川流域のビクトリア工場とマックナード工場、バーデキン地域のインビクタ工場、インカーマン工場、カラミア工場、パイオニア工場、そしてサリナのプレーン・クリーク工場)を操業するオーストラリア最大の原糖生産企業であり、クイーンズランド砂糖輸出公社(QSL)を通じた輸出でも同国第2位の取扱量を誇っていた。ウィルマーのクオック・クンホン会長兼最高経営責任者は、この買収を通じてスクロジェンが持つ砂糖のバリューチェーン全体にわたる知見とオーストラリアでの市場優位性を活用し、インドネシアをはじめとするアジア市場での成長戦略を進める方針を示した。
ウィルマーの傘下に入った後、スクロジェンは経営破綻した生産者協同組合が運営していたプロサーパイン工場を管財人から買収するなど、取得から1年足らずのうちにオーストラリア国内での投資額を19億米ドル近くにまで積み増した。その後、社名はウィルマー・シュガーへと改められ、現在ではウィルマー・シュガー・アンド・リニューアブルズ(Wilmar Sugar and Renewables)のブランド名のもと、製糖工場群に加えてバイオエタノール蒸留設備やサトウキビ輸送用の専用鉄道網の運営までを含む、垂直統合型の砂糖・再生可能エネルギー事業を展開している。オーストラリアの砂糖生産量の約95パーセントはクイーンズランド州で生産されており、その約半分をウィルマー・シュガーが担う構図となっている。
なお、事業を手放した側であったCSRリミテッドは、その後も建材専業企業として独立を保っていたが、2024年にフランスの建材大手サンゴバン(Saint-Gobain)による買収提案を受け入れ、1株あたり9オーストラリアドル、総額でおよそ45億オーストラリアドル(約30億米ドル)での買収が同年7月に完了し、上場企業としての歴史に幕を下ろした。1855年の創業以来、砂糖と建材という二つの事業を軸に成長してきたCSRグループの系譜は、こうして砂糖部門がウィルマー・インターナショナルの傘下で、建材部門がサンゴバンの傘下で、それぞれ別の道を歩む結果となった。
第1版:2026-09-02.
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