
シンガラジャ・プトラ(PT Singaraja Putra Tbk)は、インドネシア西ジャワ州ブカシ(Bekasi, West Java)のチカラン地区に本社を置く企業。もともと宿泊施設運営を主たる事業として設立されたが、その後の株式取得や事業再編を通じて木材加工事業や石炭採掘事業へと業容を広げ、今日ではホールディングカンパニーとしての性格を強めている企業である。インドネシア証券取引所に上場する同社株式は、石炭事業への転換以降の2020年代半ば以降に急激な株価上昇を経験。時価総額は約10億ドル(2026)。
シンガラジャ・プトラは、2005年9月23日に設立された。設立当初の事業目的は短期宿泊施設の提供であり、翌2006年には、リッポ・チカラン地区において商業運営を開始している。同社が運営する宿泊施設はインペリアル・シンガラジャの名で知られ、地域の需要に応じた客室を備えたホステルとして展開された。2007年には、当時のインドネシア会社法に適合させるための定款の調整が行われ、法人としての体制が整備された。この時期のシンガラジャ・プトラは、まだ地域密着型の中小規模な宿泊事業者にとどまっており、後年の多角化とは大きく異なる姿であった。
2018年に入ると、シンガラジャ・プトラは事業の多角化に向けた動きを本格化させた。同年11月には基本資本金および払込済資本金の増資を実施し、同年12月には木材加工会社であるインテルカユ・ヌサンタラの株式54%を、およそ200億ルピアで取得した。この買収により、同社はタンゲラン県チュルグを拠点とする住宅用家具向け木材加工事業を傘下に収め、宿泊業に加えて製造業の分野にも進出することとなった。2019年8月6日には会社形態が非公開会社から公開会社へと変更され、同年11月8日、インドネシア証券取引所への新規株式公開を果たした。公開価格は1株あたり108ルピアであった。上場翌年の2020年3月には、ホステルの予約アプリケーションを開発するザ・ルーム・インドネシアを設立し、デジタル分野への展開も試みている。
2022年11月、シンガラジャ・プトラの経営に大きな転機が訪れた。プアン・マハラニ氏(国民議会議長、メガワティ元大統領の娘)の夫であり、不動産・物流業を営むバンバン・スクモノハディ氏の息子である実業家ハプソロ・スクモノハディ(通称ハッピー・ハプソロ,Hapsoro Sukmonohadi)氏に近い投資体であるアウタム・プリマ・インドネシア(PT Autum Prima Indonesia)、バトゥバラ・デベロップメント(Batubara Development Pte. Ltd.)、バシス・エネルギ・プリマ(PT Basis Energi Prima)の3社が同社株式の過半を取得し、ハプソロ氏の企業グループの支配下に入ったのである。ハプソロ氏はインドネシア国民議会議長を務めるプアン・マハラニ氏の夫であり、メガワティ・スカルノプトリ元大統領の義理の息子にあたる人物として知られる。この資本再編を契機として、同社の事業の重心は大きく変化していく。2023年5月には、カプアス県内に複数の炭鉱権益を保有する持株会社ドゥイ・ダヤ・スワカルサの取得計画が公表され、同年6月の臨時株主総会での承認と銀行借入を経て、同年9月に買収が実行された。買収額はおよそ8,990億ルピアであった。同年10月には、デジタル事業であったザ・ルーム・インドネシアの全株式を3億ルピアで売却しており、宿泊予約アプリ事業からの撤退が示すように、同社の経営資源は石炭事業へと集中的に振り向けられていった。2023年末時点で、シンガラジャ・プトラはカプアス県において確認埋蔵量5,600万トンに相当する石炭資源を保有するに至っている。
2025年12月、シンガラジャ・プトラをめぐって新たな動きが表面化した。インドネシアの実業家プラヨゴ・パングストゥ氏の関連会社であるプトリンド・ジャヤ・クレアシ(PT Petrindo Jaya Kreasi Tbk)が、傘下のクレアシ・ジャサ・プルサダを通じて、ハプソロ氏側からシンガラジャ・プトラ株式の過半、具体的には51%の取得を目指して交渉に入っていることを公表したのである。当時の株主構成は、一般株主が44.78%、アウタム・プリマ・インドネシアが30%、バトゥバラ・デベロップメントが16.22%、ハプソロ氏本人が9%を保有する形であった。この動きは、石炭・鉱業分野での事業基盤拡大を図るプラヨゴ・パングストゥ氏系グループと、これまで同社を率いてきたハプソロ氏系グループとの間の資本移動として市場の注目を集めた。もっとも、この交渉は2026年に入った時点でも最終合意には至っておらず、両者の支配権をめぐる動きは引き続き株式市場の関心を集める材料となっている。なお、この間にもシンガラジャ・プトラの既存の支配株主グループは、同社が実施した新株引受権付き増資に対して少なくとも9,000億ルピア規模の応募を約束するなど、事業拡大への積極的な資本参加を続けている。
第1版:2026-09-03.
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