クレスッド

概要

クレスッド(Cresud S.A.C.I.F. y A.)は、農業関連ビジネスと都市不動産投資を主とする巨大コングロマリット企業。アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ボリビアにまたがる農業事業と、主にイルサを通じて展開される都市不動産・投資事業の二本柱で構成される複合企業となっている。農業事業では、穀物生産、肉牛の肥育・繁殖・食肉処理、酪農、さとうきび生産、種子や資材の卸売など多岐にわたる業務を手がけている。時価総額は約8億4,000万ドル〜8億8,000万ドル(2026)。

起源 ベルギー系金融会社の子会社として(1936年)

クレスッド(Cresud S.A.C.I.F. y A.)の起源は1936年に遡る。同社はもともと、アルゼンチンで都市部および農村部向けの融資業務を手がけていたベルギー系金融会社クレディ・フォンシエ(Crédit Foncier)の子会社として設立された。設立目的の一つは、クレディ・フォンシエが融資の担保として差し押さえた不動産を管理・運用することにあり、この時点では独立した事業会社というより、親会社の資産管理部門としての性格が強かった。クレディ・フォンシエは1959年に清算されることとなり、これに伴いクレスッドの株式は同社の株主に分配されるという経緯をたどった。

証券取引所への上場と農牧業への専業化(1960年-1980年代)

クレディ・フォンシエの清算にともなう株式分配を経て、クレスッドの株式は1960年にブエノスアイレス証券取引所に上場された。これにより同社は名実ともに独立した公開会社としての歩みを開始することになる。1960年代から1970年代にかけて、クレスッドは不動産管理会社としての性格を薄め、パンパ地域を中心とした農地の運用、穀物生産、牧畜業に特化した企業へと事業内容を転換していった。もっとも、この時期のクレスッドはまだ小規模な地方農牧会社の域を出るものではなく、アルゼンチン経済がたびたび見舞われたインフレーションや政情不安の影響を強く受ける存在であった。

エドゥアルド・エルズタインによる経営権取得(1994年)

クレスッドの歴史における最大の転機は、1994年にエドゥアルド・エルズタイン(Eduardo Sergio Elsztain, 1960-01-26〜)が同社の経営権を取得したことである。エルズタインは1980年代に家業の小規模な不動産会社で働いていたが、同社は当時のアルゼンチン経済危機の煽りを受けて経営が行き詰まった。1990年、エルズタインは一年間ニューヨークに滞在し、著名な投資家ジョージ・ソロスに接触して、新政権下でアルゼンチン経済が回復に向かうとの見通しを説き、投資資金を引き出すことに成功したと伝えられている。この資金を元手に、エルズタインはすでに1991年に取得していた不動産会社イルサ(IRSA、Inversiones y Representaciones Sociedad Anónima)に続き、1994年にはクレスッドの支配株主となった。当時のパンパ地域の大農園は、度重なる分割相続や資本不足、高い負債水準によって収益性を落としており、割安な価格で取得できる農地が多数存在していた。エルズタインはこうした農地を取得したうえで第三者に賃貸したり、専門の経営陣を招いて生産性を高めたりする手法により、大きな設備投資を伴わずに高い収益率を実現する戦略を採った。経営の実務は、農学の専門家であった弟のアレハンドロ・エルズタインに委ねられ、エドゥアルド自身は最高経営責任者として全体戦略を統括する体制が敷かれた。

国際資本市場への進出と農地拡大(1990年代後半)

経営権取得後のクレスッドは急速に規模を拡大させた。1996年時点で、同社はすでに100万エーカー近い農地、牧場、森林地を保有するに至っていた。1997年には米国のナスダック市場に株式を上場し、この際の株式公開によっておよそ9,200万ドルの資金を調達した。この結果、クレスッドはアルゼンチンとアメリカ合衆国の双方の市場に上場する最初のラテンアメリカ農牧企業となったとされる。同じ1997年には隣国ブラジルへの進出も開始しており、以後クレスッドはアルゼンチン国内にとどまらず、ブラジル、ボリビア、パラグアイなど周辺国にも農地を保有する多国籍農牧企業としての性格を強めていくことになる。

不動産事業への多角化とIRSAとの資本関係の深化(2000年代以降)

2000年代に入ると、クレスッドはエルズタインが同時に率いていた不動産会社イルサとの資本関係を強めていった。2002年にはイルサの株式のおよそ19.85%を取得し、2009年にはこの持ち株比率をさらに引き上げてイルサを直接の主要子会社とするに至った。これにより、クレスッドは農業生産事業と、ショッピングモールやオフィスビル、ホテルの運営を含む都市不動産・投資事業という二つの事業の柱を持つ複合企業へと変貌を遂げた。農業生産で得た収益を都市部の不動産開発に再投資し、逆に不動産市況が悪化した局面では農地の含み益を活用するという形で、両事業は相互に補完し合う関係を築いている。ブラジル事業についても、2007年前後にブラジラグロ(BrasilAgro)として独立した上場企業に再編され、ニューヨーク証券取引所とサンパウロ証券取引所の双方に株式を上場するに至った。

第1版:2026-09-08.



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