エクソンモービル

Exxon Mobile Corporation.

エクソンモービル[Exxon Mobil Corporation]は,アメリカ合衆国テキサス州アーヴィングに本社を置く世界最大級の石油・ガス関連企業である.同社は国際石油資本[石油メジャー]の中でも特に重要な地位を占め,シェブロン,BP,シェル,トタルエナジーズ,エニと並んで6大メジャー[スーパーメジャー]の一角を成している.現在のエクソンモービルは,1999年にエクソン社[Exxon Corporation]とモービル社[Mobil Corporation]の合併によって誕生したが,その起源は19世紀末に遡る.

同社のルーツは,1870年にジョン・D・ロックフェラーが創業したスタンダード・オイル[Standard Oil]にある.スタンダード・オイルは19世紀末から20世紀初頭にかけて,アメリカ国内の石油産業を実質的に支配し,巨大な信託企業として君臨した.同社は垂直統合戦略により,原油の採掘から精製,輸送,販売まで一貫して手がけ,一時期は米国内石油市場の約90%を支配するに至った.しかし,その独占的地位が反トラスト法[シャーマン法]違反と見なされ,1911年にアメリカ連邦最高裁の判断により,34の独立した企業に分割された.この分割によって生まれた企業のうち,スタンダード・オイル・オブ・ニュージャージー[後のエクソン]とスタンダード・オイル・オブ・ニューヨーク[後のモービル]が,後の合併の主役となった.

スタンダード・オイル・オブ・ニュージャージーは,1926年にエッソ[Esso]のブランドを採用し,国内外での事業拡大を進めた.第二次世界大戦中には連合軍への燃料供給を担い,戦後も石油精製・化学事業を強化するなど,総合エネルギー企業への道を歩んだ.1950年代以降,同社は中東,ベネズエラ,東南アジアなどでの石油開発を積極的に推進し,特にサウジアラビアのアラムコ[当時はアラビア・アメリカン石油会社]への出資を通じて中東石油利権の確保に成功した.1972年には正式社名をエクソン[Exxon]に変更し,Esso,Enco,Humbleなどのブランドを統一して,企業イメージを刷新した.

一方,スタンダード・オイル・オブ・ニューヨークは,1931年にヴァキューム・オイル社[Vacuum Oil Company]と合併し,ソコニー・ヴァキューム[Socony-Vacuum]を経て,1955年にソコニー・モービル[Socony Mobil]となり,1966年には単にモービル[Mobil]となった.モービルは潤滑油や石油化学製品に強みを持ち,ガソリンスタンドなど小売分野でも広く展開した.同社は特にモービル1ブランドの合成潤滑油で世界的な地位を築いた.

1973年と1979年の二度にわたる石油危機は,石油メジャーの事業環境を大きく変化させた.産油国による石油国有化の波が押し寄せ,従来の利権協定が見直される中で,石油メジャー各社は事業戦略の転換を迫られた.エクソンとモービルもこの流れの中で,上流部門での新たな油田開発,下流部門での効率化,そして石油化学事業の強化を図った.

1990年代後半,石油業界は原油価格の長期低迷や過剰供給,アジア通貨危機の影響を受け,業界再編が加速した.1998年12月,エクソンとモービルは総額810億ドルにのぼる経営統合を発表し,翌1999年11月30日に正式に合併してエクソンモービルが誕生した.この合併は当時世界最大規模の企業統合とされ,両社の資産,人的資源,研究開発能力を統合することで,グローバルな競争力をさらに強化する狙いがあった.

合併後のエクソンモービルは,探鉱・開発[Upstream],精製・販売[Downstream],石油化学[Chemical]という三つの柱を持つ垂直統合型のエネルギー企業として事業を展開した.特に探鉱・開発部門では,ロシア,カナダ,アフリカ,アジア,南米など世界中で大規模プロジェクトを手がけ,天然ガスや深海油田,シェールオイル・ガスへの投資も積極的に行ってきた.同社は技術革新にも力を入れ,特に2000年代以降のシェール革命においては,水平掘削技術や水圧破砕技術の向上に大きく貢献した.

2000年代以降,気候変動問題がグローバルな政策課題となるなかで,エクソンモービルは長らく化石燃料中心の戦略を堅持していたが,近年では株主や社会からの圧力を受け,脱炭素や再生可能エネルギーへの対応を強化する方向に転じつつある.特に,二酸化炭素の回収・利用・貯留[CCUS]技術,水素製造技術,バイオ燃料,そして低炭素ソリューション事業に関する研究開発が注目されており,持続可能なエネルギーシステムへの移行を意識した技術投資が進められている.2021年には低炭素ソリューション事業部門を新設し,2030年までに同分野に150億ドルの投資を行うことを表明した.

また,2020年代に入ってからは,新型コロナウイルス感染症の世界的流行による需要減少,ウクライナ危機に伴う地政学的リスクの高まり,国際的なエネルギー市場の不確実性が増す中で,安定的なエネルギー供給者としての役割が再評価されつつある.他方で,環境規制の強化やESG[環境・社会・ガバナンス]投資の潮流に直面し,企業としての社会的責任や企業統治のあり方も問われている.

エクソンモービルは,Fortune Global 500において常に上位にランクインする巨大企業であり,2023年時点での時価総額は世界最大級のエネルギー企業の一つとなっている.同社は約6万人の従業員を擁し,世界約50カ国で事業を展開している.歴史的にはアメリカ産業資本主義の象徴的存在であり続け,今日においてもエネルギーと経済,政治との結びつきのなかで特異な地位を占めている.石油メジャーとしての長い歴史と技術力,そして資本力を背景に,エネルギー転換期における業界のリーダー的役割を担うことが期待されている.



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