
イベルソル(Ibersol, S.G.P.S., S.A.)は、主にポルトガル、スペイン、アンゴラで大規模なレストランチェーンを展開・運営する、国際的な総合フードサービス企業。1994年の買収以降、経営権を握り続けるピント・デ・ソウザ家(Pinto de Sousa)およびテイシェイラ家(Teixeira)の資産管理会社であるATPS-SGPSが長らく過半数株主の地位を占めており、2024年末時点の保有比率は約52%から54%の水準で推移している。ポルトガル証券取引所の主要指数であるPSI指数の構成銘柄として、外食産業を代表する上場企業の一社。時価総額は約4.6億ドル(2026)。
イベルソルは、1985年12月30日にポルトガルの大手複合企業ソナエ・グループ(Sonae)の観光部門子会社として設立された「ソナエ・イモビリアリア・エ・トゥリズモ(Sonae Imobiliária e Turismo)」に遡る。同社が外食産業への本格参入を果たすのは1989年のことであり、米国ブランド「ピザハット(Pizza Hut)」のポルトガル国内展開を目的として事業を開始した。1990年にはアルブフェイラ(Albufeira)に第1号店を開業し、以後ソナエの観光関連事業の一角としてホテル業や複数の外食業態の運営を手掛けるようになった。
1994年末、投資会社パルジェステ(Pargeste)が同社を買収し、外食とレジャー分野に特化したより広範な事業体として再編する方針を打ち出した。これを機に社名は現在のイベルソルに改められている。1995年には単一業態への依存がもたらす拡大余地の限界を踏まえ、より収益性の高い分野への進出を図る方針が決定され、米ペプシコ(PepsiCo)とフランチャイズ契約を締結して「ケンタッキーフライドチキン(KFC)」をカシュカイス・ショッピング(CascaisShopping)に出店した。1996年にはスペインのアグロリメン(Agrolimen)グループと提携して「パンス・アンド・カンパニー(Pans & Company)」をポルトガルに導入したほか、自社ブランド「パスタ・カフェ(Pasta Caffé)」を立ち上げ、さらに空港や高速道路、鉄道駅における外食コンセッション事業を展開していたイベルーザ(Iberusa)を買収し、事業基盤を大きく拡大させた。
パルジェステの傘下に入ったイベルソルであったが、1997年、当時経営陣にあったアルベルト・テイシェイラ(Alberto Teixeira)とアントニオ・ピント・デ・ソウザ(António Pinto de Sousa)がマネジメント・バイアウト(MBO)を実行し、パルジェステの持ち株を取得して資本の60%を掌握するに至った。同年11月27日にユーロネクスト・リスボン(Euronext Lisbon)へ株式を公開したのは、このMBOと軌を一にする動きであった。以後、両名はそれぞれの資産管理会社を通じて資本管理会社ATPS-SGPSを設立し、これを議決権行使の受け皿として一体運用する株主間協定を締結した。パルジェステの資本自体がその後どのような経路をたどったかについては確認が取れていないが、少なくとも1997年のMBOを境にパルジェステによる支配は終了し、テイシェイラ家とピント・デ・ソウザ家がATPS-SGPSを通じて経営権と資本の双方を握る体制へと移行したことは明確である。
2000年には売上高が8200万ユーロを超え、124以上の店舗と約3050人の従業員を擁する規模に成長した。2001年には「バーガーキング(Burger King)」の第1号店をノルテショッピング(NorteShopping)に開業し、同年の売上高は9670万ユーロに達した。2006年にはスペインでバーガーキング31店舗を運営していたルルカ(Lurca)を買収し、イベリア半島全域での事業展開を加速させた。この過程で同社はスペインの競合テレピザ(Telepizza)に対する公開買付け(OPA)にも参加したが、最終的にはこれを断念し、代わりにバーガーキング事業への集中投資に舵を切った。
2016年10月、イベルソルはスペインの大手外食グループ「イート・アウト・グループ(Eat Out Group)」の全株式を1億500万ユーロで取得した。同グループはパンス・アンド・カンパニーなどのブランドを擁し、スペイン、イタリア、ポルトガルに事業基盤を持つ企業であった。この買収により店舗数は377店から504店へと急増し、システム全体の年間売上高は4億7800万ユーロを超える規模となった。この時期、イベルソルはピザハットとバーガーキングの選択的拡大戦略を軸に据えつつ、空港などのコンセッション事業やケータリング事業の比重も高めていった。
2019年には創業から30年を迎え、イベリア半島全域で648店舗を運営する規模へと成長していたが、2020年から2021年にかけては新型コロナウイルス感染症の流行により大きな打撃を受けた。2022年2月、バーガーキングのイベリア半島マスターフランチャイズを保有するレストラン・ブランズ・イベリア(Restaurant Brands Iberia)から、ポルトガルおよびスペインのバーガーキング事業の買収提案を受けた。数次にわたる交渉を経て、同年8月3日に譲渡契約を締結し、11月30日付で取引を完了した。譲渡対価は現金2億,4450万ユーロに、業績連動の追加対価1,550万ユーロを加えた総額約2億6,000万ユーロであった。この売却により、イベルソルはピザハット、KFC、パンス・アンド・カンパニー、タコベル(Taco Bell)、および2023年に提携契約を結んだ英国発のサンドイッチ・コーヒーチェーン「プレタ・マンジェ(Pret A Manger)」を中心とする事業構成へと再編された。資本構成の面では、1997年のMBO以降、テイシェイラ家とピント・デ・ソウザ家の資産管理会社であるATPS-SGPSが長らく過半数株主の地位を占めており、2024年末時点の保有比率は約52%から54%の水準で推移している。
第1版:2026-09-12.
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