アムライズ

概要

アムライズ(Amrize Ltd.,スイス法人としての正式名称はAmrize AG/Amrize SA)は、2025年6月23日、スイスの建材大手ホルシム・グループ(Holcim Group)から北米事業全体が完全分離・独立上場する形で誕生した企業である。米国およびカナダの建設市場を対象に、セメント・骨材・生コンクリート・アスファルトなどを扱う「ビルディング・マテリアルズ」事業と、商業用・住宅用の屋根材やビルエンベロープ製品を扱う「ビルディング・エンベロープ」事業の二本柱を有する。法人登記上の本社はスイス・ツーク州に置かれる一方、事業運営上の本拠地は米国イリノイ州シカゴに構えられており、ニューヨーク証券取引所(NYSE)とスイス証券取引所(SIX)の双方に「AMRZ」のティッカーで重複上場している。アムライズはスイス法に基づいて設立された法人(Amrize Ltd/Amrize AG)であり、法的な登記上の本店はスイスのツークに置かれている。一方、実際の経営機能・本社機能は米国シカゴに置かれており、決算発表などのプレスリリースも「CHICAGO & ZUG, Switzerland」という形で両都市を並記される。

前史:ホルシムとラファージュの北米事業(1950年代-2015年)

アムライズの事業基盤は、かつて競合関係にあったホルシムとラファージュが、それぞれ数十年をかけて北米市場に築いてきたセメント・骨材事業に由来する。ホルシムは米国子会社ホルナム(Holnam)などを通じて北米のセメント市場に足場を築いており、2005年には英国の骨材大手アグリゲート・インダストリーズ(Aggregate Industries)を買収し、北米における骨材・生コンクリート事業をさらに強化した。一方のラファージュも、1956年設立のラファージュ・セメント・オブ・ノースアメリカ以来、北米で独自のセメント・骨材事業を展開しており、2006年には親会社ラファージュ・グループがラファージュ・ノース・アメリカの株式公開買付けを実施し、同社をニューヨーク証券取引所から上場廃止のうえ完全子会社化していた。2015年のラファージュとホルシムの対等合併によりラファージュホルシムが発足すると、両社の北米事業は同一グループ内で並存する形となり、これが後のアムライズの直接的な事業母体となった。

ホルシムによる建材事業の再編とビルディング・エンベロープ事業への進出(2021年-2023年)

2021年、ラファージュホルシムはホルシム・グループへと改称し、従来のセメント中心の事業構造から「グリーン成長」を掲げた多角化戦略への転換を進めた。この戦略の一環として、同年4月にはブリヂストン傘下であった米国の商業用ルーフィング大手ファイヤーストーン・ビルディング・プロダクツ(Firestone Building Products)を買収し、これがホルシム・グループのビルエンベロープ事業参入の起点となった。続いて2021年12月には、1956年創業のオレゴン州の住宅用屋根材メーカー、マラーキー・ルーフィング・プロダクツ(Malarkey Roofing Products)を約13億5000万ドルで買収することに合意し(取引完了は2022年)、商業用・住宅用双方をカバーする総合屋根材事業者としての体制を整えた。さらに2023年2月には、商業用ルーフィングメーカーのデュロラスト(Duro-Last)を約12億9000万ドルで買収し、北米におけるビルエンベロープ事業の一段の拡充を図った。これら一連の買収により、北米事業はセメント・骨材中心の伝統的建材事業に加え、屋根材・断熱材などの高付加価値なソリューションズ・アンド・プロダクツ事業を併せ持つ、独自性の高い事業ポートフォリオへと発展していった。

北米事業の分離・独立上場構想の始動(2024年)

2024年1月、ホルシム・グループは、拡大を続けてきた北米事業を単独の独立企業として分離し、米国市場に上場させる計画を公表した。この構想は、当時、米国のインフラ投資雇用法(IIJA)やインフレ抑制法(IRA)を背景とした大規模な公共投資の拡大が見込まれていた時期に打ち出されたものであり、北米建材市場の成長機会を専業体制のもとで最大限に取り込む狙いがあったとされる。分離後の北米新会社の経営を委ねられたのが、2017年から2024年4月までホルシムの最高経営責任者を務め、2023年からは同社取締役会長としてこの米国上場計画の陣頭指揮に当たっていたヤン・イェニッシュ(Jan Jenisch)である。イェニッシュは分離後の新会社において会長兼最高経営責任者に就任することが予定された。

スピンオフの実行とアムライズの上場(2025年)

2025年5月14日、ホルシムの年次株主総会において、株主の99.75%という圧倒的多数の賛成により北米事業の完全分離が承認された。同年6月2日には米国証券取引委員会(SEC)に提出されたフォーム10登録届出書が効力を発生し、6月20日を基準日として、ホルシム株主に対し保有株式1株につきアムライズ株式1株を現物配当する形での分配が実施された。そして2025年6月23日、アムライズはホルシムからの100%スピンオフを完了し、独立した公開企業としてニューヨーク証券取引所およびスイス証券取引所に「AMRZ」の銘柄で同時上場を果たした。上場にあたり、S&Pグローバル・レーティングスはBBB+、ムーディーズ・レーティングスはBaa1の投資適格格付けをそれぞれ付与し、同社は34億ドル規模の社債発行、20億ドルのコミットメント型信用枠、20億ドルのコマーシャルペーパー・プログラムなど、堅実な財務基盤を整えたうえで独立企業としての一歩を踏み出した。分離完了後、ホルシム・グループはアムライズ株式を一切保有せず、両社は資本関係を持たない完全に独立した公開企業として、それぞれの事業に特化した経営体制のもとで新たな歩みを開始することとなった。

独立企業としての展開(2025年-2026年)

独立企業として発足したアムライズは、米国全50州とカナダ全州をカバーする1000拠点超の販売・生産ネットワークを擁し、ビルディング・マテリアルズ事業とビルディング・エンベロープ事業の二本柱による専業体制を敷いている。会長兼最高経営責任者にはヤン・イェニッシュが、最高財務責任者にはバリシュ・オラン(Baris Oran)がそれぞれ就任した。上場後もアムライズは北米市場における同業他社の買収を継続しており、2026年にはテキサス州ダラス・フォートワース地域の生コンクリート業者ラピッド・レディ・ミックス(Rapid Redi-Mix)の買収に合意するなど、既存の骨材・セメント網とのシナジーを企図した中小規模の買収(ボルトオンM&A)を積み重ねている。時価総額はおよそ246億ドルに達している。従業員数はおよそ1万9,000人規模とされる(2026)。

第1版:2026-08-29.



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