トルコストリーム

定義:トルコストリーム[TurkStream]とは,ロシアからトルコを経由して南東ヨーロッパへ天然ガスを供給する海底パイプラインである.ロシアのクラスノダール地方アナパ近郊にあるルスカヤ圧縮ステーションから,黒海の海底を通ってトルコのキユキョイに上陸する.

全長は約930km[海底部分]で,2本のパイプラインから構成されており,各パイプラインの輸送能力は年間15.75億立方メートルで,総輸送能力は年間31.5億立方メートルである.1本目のラインはトルコ国内市場向け,2本目はブルガリア,セルビア,ハンガリーなど南東・中欧諸国への供給を目的としている.

このプロジェクトは,2014年12月にロシアのプーチン大統領がトルコ訪問中に発表したもので,当初の「サウスストリーム」計画の代替として提案された.サウスストリームは欧州連合[EU]の規制問題により頓挫した経緯がある.2015年11月のロシア軍機撃墜事件により一時中断されたが,2016年10月に両国間で政府間協定が締結され,建設が再開された.建設は2017年5月に正式に開始され,2019年11月に海底部分が完成し,2020年1月8日に公式な開通式が行われ,同年からガス供給が開始された.

トルコストリームは,ロシアがウクライナを経由せずにヨーロッパへガスを供給する新たなルートとして,エネルギー供給の多様化と安全保障の観点から重要視されている.特に,2024年末にロシアとウクライナ間のガス輸送契約が終了し,ウクライナ経由の供給が大幅に減少したことで,トルコストリームはロシアからヨーロッパへの主要なパイプラインの一つとなった.ただし,「唯一の」パイプラインではなく,ノルドストリーム1[現在は稼働停止中]や北ストリーム[ベラルーシ・ポーランド経由]など他のルートも存在する.この状況は,ヨーロッパのエネルギー政策やロシアとの関係に大きな影響を与えている.特に欧州連合[EU]が脱ロシア依存を進める中で,エネルギー供給源の多様化が課題となっている.

トルコストリームのパイプ径は32インチ[約813mm]で,最大水深は約2,200mにおよび,黒海の深海を通過するという技術的に高度なプロジェクトである.設計圧力は約300バールであり,海底部分の建設はスイスのAllseas社が担当し,陸上部分はGazpromとトルコのBOTAŞの合弁会社が施工した.パイプラインの建設には高度な深海敷設技術が用いられ,環境への影響を最小限に抑える対策が講じられている.

さらに,トルコストリームの完成により,トルコはロシアとヨーロッパの間のエネルギーハブとしての地位を強化し,地域のエネルギー政策における発言力を高めることとなった.このパイプラインは単なるインフラストラクチャーを超え,地域の地政学的バランスに影響を与える重要な要素となっている.



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