カルヴァリへの道程で倒れるキリスト

盛期ルネサンス期[High Renaissance]のフィレンツェ派の画家ラファエロ・サンティ[Raffaello Santi,1483/4/6-1520/4/6]による1514年から1516年頃に制作された油彩画.

.キリストが十字架を背負ってゴルゴタの丘へ向かう途中で倒れ,聖母マリアが苦悶の表情を浮かべる瞬間を描いている.原題はイタリア語で,Lo Spasimo di Siciliaであるが,Lo Spasimoとは,聖母マリアの失神や激しい苦悶を意味し,16世紀初頭のカトリック信仰において重要視された主題であった.

構図は,キリストが十字架の重みによって倒れる場面を中心に,前景に感情豊かな登場人物たちが密集して描かれている.左側にはキレネのシモンが十字架を持ち上げ,右側には聖母マリアを含む4人の女性たちが描かれている.背景には遠景として人々や十字架が配置され,舞台装置のような効果を生み出している.ラファエロは,光と色彩を巧みに用いて,登場人物の表情や動作を際立たせ,観る者に深い感動を与える.

この作品は,シチリア・パレルモのサンタ・マリア・デッロ・スパズィモ修道院のためにローマで制作された.完成後,海路でパレルモへ輸送中に嵐に遭い,船が難破したが,絵画は無傷でジェノヴァの海岸に漂着したという逸話が伝えられている.その後,絵画は無事にパレルモに到着し,修道院に設置された.しかし,1661年にスペイン副王フェルナンド・デ・フォンセカがフィリップ4世のためにこの作品を取得し,マドリードの王宮礼拝堂に移された.ナポレオン戦争中にはパリに持ち去られたが,1822年にスペインに返還され,最終的にプラド美術館に収蔵された.


'Beauty is truth, truth beauty,'-that is all Ye know on earth, and all ye need to know.
John Keats,"Ode on a Grecian Urn"

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