ゲーム理論とは

利害を伴う複数の意思決定をする主体が、その意思決定に関して相互作用する関係を扱う考え方の枠組み。

ゲーム理論の起源

数学者フォン・ノイマン(John von Neumann)と経済学者モルゲンシュテルン(Osker Morgenstern)が1944年に著した『ゲームの理論と経済行動(Theory of Games and Economic Behavior)』を嚆矢とする。

行動の分類

イギリスの進化生物学者であるハミルトン(William Donald "Bill" Hamilton,1936-2000)は行動を4つに分類した。
利己的行動:行為者が利益を得、被行為者がコストを負担することになる行動。
合理的行動とも言われ、自分の欲求や選好に代表される利益を最大限に満たそうとする行動をとること。
利他的行動:行為者がコストを負担し、被行為者が利益を得ることになる行動。
自分の利益を犠牲にして、他者の利益に繋がる行動をとること。
相利行動:行為者と被行為者のどちらも同時に利益を受けることになる行動。
いじわる行動:行為者がコストを負担し、被行為者が不利益を被ることになる行動。

利得の最大化

『最小原理』はガリレオ以来の物理原則、『効用最大化』はカール・メンガー、ウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズ、レオン・ワルラス以来の経済原則。

【最小原理】
実現される運動は、作用(=ラグランジアンの時間積分によって表現される量)が最小になるような運動である。
【効用最大化原理】
個人の経済行動の最終目標は、効用を最大化することにある。

ゲーム理論と確率論

確率論は偶然ゲーム(game of chance)から出発し、ゲーム理論は戦略ゲーム(game of strategy)から出発した。
なお、確率論の基礎付けに測度論ではなくゲーム論を用いる考え方もある(ゲーム論的確率)。

課題

シュビク教授は(中略)、これからのゲーム理論は数学以外の分野と「手を結んで」理論を作り出す必要があると語った。次世代のゲーム理論は、感情とその影響、文化や状況を考慮すべきだというのだ。

シュビク教授は、「われわれの単純なモデルでは、もはやこれまで生じてきた疑問の多くに十分応えられない。ゲーム理論の成功自体がさらなる前進を命じている」と語る。
シュビク教授によると、ゲーム理論の数学モデルは、中立志向で冷静、個人として合理的で、非社交的な「数学的人物像」を軸とし、これに「明確な優先順位と選択の構造」を与え、一切の状況は勘案しない。

シュビク教授は慎重に、しかし大げさな語彙を用いて、数学的人物像は現実の人間との「近似性に乏しい」と語る。生身の人間は「合理性の限界」や「制限された認識、習慣、本能、社会慣習」のせいで複雑になっているという。

さらに、ゲーム理論家が解決策を選ぶ場合、その解決策は「数学的な定点」となる「傾向」がある。つまり、状況を回避して、希望的観測から「何でもないとごまかす」態度を「しばしば伴う」――しかしここで回避されている状況こそが、ゲーム理論が本来捉えるべき実人生の複雑さにほかならないのだ。

才気あふれるシュビク教授はまた、多くの解決策が当然当てはまると思われてきた問題の「領域」にも「深刻な疑問」が存在すると指摘した。

「もはや心理学者や社会学者、社会心理学者との連係を避けては通れない」とシュビク教授。

出典:Diana Michele Yap、『「普通の人」をモデルにしたゲーム理論を』、2002年8月2日、WIRED NEWS