[ロールズの正義]
「分配的正義の中心的問題は、社会システムの選択にある。正義の原理は基礎構造に適用され、主要な諸制度がいかに一つのシステムに結合されるかを規定する」(John Rawls ,『正義の理論』, 1971, p274)
「ロールズの正義というのは、原初状態とも言うべき自由で平等な道徳的人格者たちが造る社会状態を設定し、その状態の中において自由で平等な道徳的人格者たちが全員一致の合意が出来るものを正義とするという正義観よね。」
「そういう道徳的人格者たちは完全に公平な立場で協力するとされているわけだ。そうした前提の上で、正義のための2つの原理を挙げているよね。」
「各人は基本的自由に対する平等の権利をもつべきであって、その基本的自由は、他の人々の同様な自由と両立しうる限りにおいて、最大限広範囲にわたる自由でなければならないというのが、第1原理だわ。」
「そして、社会的・経済的不平等というのは、@不公平が最も不遇な立場にある人の期待便益を最大化するという格差原理とA公正な機会均等という条件で、すべての人に開かれている職務や地位に付随するものでしかないという機会均等原理の2つを満たすものでなければならないというのが第2原理になるね。」
在日朝鮮人金山吉雄(仮名)らは、母国の建設記念式典に参加するために、法務大臣に出国と再入国の許可を申請した。ところが、法務大臣は、国益に沿わないという理由で不許可とした。
どのような憲法上の問題が考えられるだろうか?
「そもそも、"外国人"に人権享有主体性が認められるのかどうかが問題になるわ。でも、これは、人権の前国家的性格や憲法の国際協調主義からいって、一定の範囲で外国人にも人権の保障は認められるわね(性質説)。」
「それを前提として、出国の自由とか再入国の自由が、その性質上、果たして外国人にも保障されるかを考えないといけない。」 『外国人に再入国の自由が保障されるのだろうか』
「結論からいうと、定住外国人には日本人と同様の保障が与えられると考えられるわ。そこで、定住外国人に出国の自由と再入国の自由が保障されるとしてよ、法務大臣の行った不許可処分というのが、いわゆる公共の福祉による制約として許されるかということが問題だわね。」 『合憲性判定基準』
「出国・再入国が具体的に国益を侵すというおそれがあって、なおかつ、そうした判断が合理的かつ明確な基準で行われた場合にだけ法務大臣の行った処分は正当といえるよね。」
「そうした事情が、金山吉雄(仮名)さん達になければ、法務大臣の行った不許可の処分は裁量を逸脱したものといえるから違憲になるわね。」
日本に永住資格を持っている外国人に対して、国会議員の選挙権を認める場合と市町村会議員の選挙権を認める場合の憲法上の問題について。
「そもそも、"外国人"に人権享有主体性が認められるのかどうかが問題になるわ。でも、これは、人権の前国家的性格や憲法の国際協調主義からいって、一定の範囲で外国人にも人権の保障は認められるわね(性質説)。」
「最判平5.2.26は、外国人について国会議員の選挙権は保障されないとした。だけど、地方公共団体の場合には93条2項の『住民』の意義との関係で色々な対立があるね。」 『地方選挙権を定住外国人に認めることが出来るか?』
『外国人の公務就任権』
法人に人権享有主体性を認めることはできるか?
「現代においては、法人も社会的実体をもって重要な位置を占めていることから、法人にも人権享有主体性を認めることは出来るわね(性質説)。」
「そうは言っても、法人に自然人と全く同じ範囲や程度で人権を保障することは出来ないよね。だから、法人に一体どのような人権について保障が及ぶのかは各人権ごとに考えていかなくてはいけないよ。」
「結社の自由(§21)は当然としても、政治活動の自由(§21)、信教の自由(§20)、報道の自由(§21)はどうかとかね。政治活動の自由(§21)以外は認めてもいいでしょうね。宗教法人や新聞社などの報道機関を考えれば必要性があるし矛盾しないから。」
「政治活動の自由(§21)も、八幡製鐵政治献金事件の判例では政党の健全な発展に協力することは、社会的実体である法人に当然期待されているとして肯定している。だけど、この点は争いがあるね。」
「一方、性質上自然人にだけ認められるとされている生存権(§25)や選挙権(§15)は法人には認められないわね。」
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