血液型性格分類学

血液型性格分類学は血液型と性格を関連づけて捉える理論である。この分類の具体的な手法は血液型性格判断と呼ばれ、主に日本国内で広く親しまれている。このため、日本では個人の自己紹介や有名人のプロフィールなどに血液型が含まれることが多い。しばしば疑似科学のひとつに数え上げられることがある。

まず前置きとして、実は日本以外の多くの国では血液型で占いをする、人に血液型を尋ねるといった風習がないので、日本人が日本以外の国の人に血液型を尋ねると「あなたは医者か?」、「献血でもするのか?」といった発言が返ってくる。場合によっては警戒されたりすることもあり好ましくない態度とされる。世界的にも血液型を人に尋ねる風習のある国は日本だけである。日本以外で血液型性格分類説が信じられている国や地域としては韓国および台湾があるが、それ以外ではほとんど一般化していない。

かつてフランスで提唱されたことがあったが、ほとんど普及しておらず、学術的な研究としては英米で若干の例があるのみである。日本以外の国で普及しない原因として国によっては血液型が偏っている事もあげられる。日本では全てのABO式血液型が約10〜40%の比率でばらけているが、例えば西欧では、A型の人とO型の人が総人口の9割近くを占め、B型の人とAB型の人の割合が極端に少ない。また、混血の少ないアメリカ先住民族集団には、ほぼ全ての構成員がO型だという集団もある。このような環境において、所属人口割合が偏った属性であるABO式血液型をもって、現実世界に存在する多種多様な性格や運命を判断するという発想が生じにくい。日本と同様に各ABO式血液型の人口割合が比較的平均的なアジア諸国で普及しない原因としては、そもそもその地域の人々は、自分の血液型を知る機会が少ないという理由が挙げられる。このような地域では、所属人口割合が均一であり容易に知ることのできる属性である生年月日を基にした星座や曜日や干支による性格判断が主流となる。

そもそも血液型は医療行為以外で必要になる情報ではなく、必要になればちょっと調べればすぐ判ることなので、戦時中ならともかく、自分の血液型など知っておく必要がないという考え方が日本以外の国では一般的なのである。したがって、若者向けの雑誌にABO式血液型による性格判断や占いが載るということはまずない。ただし、ピーター・ダダモ博士による血液型別ダイエット本が米国でベストセラーになるなど、一時的なブームとしてABO式血液型による分類が話題になることはある。

血液型と性格との関連に関する研究は、1916年に医師の原来復らによるものが最初とされているが、昭和初期になって、東京女子高等師範学校 (現お茶の水女子大学) 教授であった心理学者、古川竹二による一連の研究が広く注目を浴びた。現在も広く流布している血液型による性格判断の原型は、ここで作られたと言って良い。

古川の最初の論文は、1927年に『心理学研究』誌上に「血液型による気質の研究」が発表され、その後に研究の集大成が1932年に『血液型と気質』として出版された。一般には、同書の内容が古川学説とされることが多い。

この学説で用いる主な手法は、血液型別の質問項目(自省表)をそれぞれ10項目程度ずつ作成し、質問紙法により血液型との一致率を測定するものである。古川自身によると、自省表は80%以上の一致率があるものとされていた。これとは別に、職業別に血液型分布を調査し、職業特性と比較することも行われた。

古川学説は、東京大学医学部教授であった古畑種基らに支持され、心理学だけではなく、医学、教育など多くの分野で注目を集めた。このため、数多くの追試が行われたが、例外が多いため古畑も懐疑的になり、当時の学会では否定される結果となった。

しかし、当時は統計的検定や性格検査などの手法が未整備であったため、それらの否定的な結論を無批判に受け入れることは必ずしも適切ではない。再調査を実施してみると、多くのデータは有意差は示さないが、一部のものは有意でありかつ古川の主張と一致することは事実である。

旧日本陸軍でも上記の影響を受けて、血液型から将兵の性格・能力を分類し、部隊編成の際に最も適した兵科・任務に就けるようにとの考えから、各部隊から将兵の調書を集め研究が行われたが、期待した結果が余り得られず、また得られても戦時大量動員の際には一々チェック・分類するのは不可能に近いため、採用されずに終わった。

第二次大戦後ひとたび息をひそめていた血液型と性格をめぐる話が復活したきっかけは、1971年、姉が古川の教え子であった能見正比古の『血液型でわかる相性』(ISBN 4413011015) 以下一連の著作であった。能見の著作には著名人の血液型リストがしばしば掲載されており、それが主張に説得力を持たせることになったものと考えられる。平成以降は竹内久美子が著書『小さな悪魔の背中の窪み』(ISBN 4103781025 ISBN 4101238138) などの中で生物学的な正当性を主張して注目を浴びた。

ただ、科学的な根拠に乏しいにも関わらず、ある程度性格を知っている相手の血液型であれば、25%をはるかに超える確率で当てる事ができる人が存在することは知られている。しかしA型とO型が全体の70%を占めるので不思議な話ではない。極端な話、毎回A型を言えば40%の確率で正解するのである。また、血液型性格分類が流布されていることで、各人の行動様式に告げられた性格が織り込まれてしまっている影響が指摘されている。この点をみると、性格の発達にまで影響してしまう可能性があるという点で単に俗信と捨て置くことはできないものであると言える。坂元章らは、これを血液型ステレオタイプによる自己成就現象(ピグマリオン効果参照)と名付け、1992年に自己判断による性格は血液型性格分類に一致する、とする研究結果を発表している。

例えば、生まれたときからA型は真面目だからと何度も繰り返し言われると、本人も自分が真面目だと思い、そのように行動してしまう事がないとは言えない。またそれを見てやっぱりA型は真面目だとする根拠にしてしまう因果の逆転が起こる。

血液型性格分類についての論争は、1970年代から現在まで続いており、従来は心理学や医学的な見地からの反対論がほとんどであったが、最近は大脳生理学や遺伝子工学的な見地による賛成論も散見される。一般の話題になることから、マスメディアにもたびたび取り上げられ、賛成、反対それぞれの立場から何回か実験も行われた。現在、まだ学術的には確定的な結論は出ていない。

どうして数多くある遺伝形質の中で血液型が、それもABO型のみが性格に関係するのかの納得いく説明はない。血液型の分類にはABO型以外にもRh+-型やMN型など様々な分け方があるがそれらについて語られることもまず無い。また骨髄移植によって血液型がドナーのものに変わった時にも性格が変わるのか、そもそも、4類型するための性格についての基準が何かなど極めて問題が多い。

なお、脳にはABO血液型物質は存在しないが、弱いながら抗原抗体反応は起こるため、なんらかの類似物質が脳に存在する可能性は否定できないとされている。

出典:wikipediaより改編。


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