7月7日(日曜日)旧暦5月27日、丙子、先勝、六白金星、小暑、七夕
法律で取締役会の決議事項とされているものを株主総会の決議事項とすることは出来るのでしょうか?
「株主総会というのは、会社の実質的所有者である株主により構成される必要的機関であり、株式会社の最高意思決定機関だわ」
「株主総会は株式会社の最高意思決定機関なんだから、法が株主総会の決議事項を原則として、法の定める基本的事項に限るとしたのは、ただ会社の合理的運営の見地から、そのほうが通常の株主の利益に資すると考えたからに過ぎないね」
「つまり、取締役会の決議事項か株主総会の決議事項かっていう区別は絶対的じゃないということになるわね。そうすると、取締役会の決議事項を定款で株主総会の決議事項とすることも、株式会社の本質または強行法規に反しない限り許されるわね」
[参考] 商法230条の10
7月6日(土曜日)旧暦5月26日、乙亥、赤口、七赤金星
不動産賃借権などは時効取得できるんでしょうか?(柳川在住、立花宗茂さん)
「取得時効の前提というのは長期にわたって存続している事実状態だね」
「不動産賃貸借というのは継続的契約であるし、占有を不可欠の要素としているから、そういう事実状態はあるといえるわ」
「加えて、不動産賃借権っていうのは物権化(民法605条)しているね」
「地上権とも変わらないしね」
[石橋君] 「ということは、不動産賃借権も時効取得できるということになりますね」
「但しだよ、@土地の継続的な用益というような外形的事実の存在とA賃料支払いなどによって賃借の意思が客観的に表れていることが必要だね」
[石橋君] 「どうしてですか」
「不動産賃借権に民法163条の適用を認める場合、真の所有者に時効中断の機会を保障してあげる必要があるのよ」
7月5日(金曜日)旧暦5月25日、甲戌、大安
[石橋君] 「滝川一益さんは、自分が大枚を叩いて購入した、まだローンが残っているバイクを盗まれたんです。一益さんの自宅は閑静な場所にあるので、安心して自宅の前の道路に鍵を掛けないでとめておいたそうなんです。ところが、これを盗んだヤツがいた。全く、人様のものを盗むとは不届きなことです。問題はこれからですよ。そのバイクを隣町の北条さんの家のガレージの中で見つけたんで、取り戻そうと、」
「権利が侵害されたときに、自力でこれを回復することが法的に認められるのかということね」
「原則として認めるべきではないね。というのは、自力救済を広く認めることは法的手続きによる権利の救済を定める法秩序を混乱させることになるからね」
「でもよ、自力救済を一切認めないとするっていうのは、権利の保護としては不十分になるケースも出てきてしまうわね。今回の滝川一益さんのようにね」
「滝川一益さんのケースが該当するかどうかはなんとも言えないけどね。とはいえ、確かに自力救済を一切認めないとすると、権利の保護としては不十分になるという場合があることは確かだね」
「でしょ、だから、一定の場合には自力救済を認めるべきだっていうことね」
「一定の場合というのは、法の定める権利救済手続によったのでは権利に対する違法な侵害に対して権利の保全を図ることが不可能あるいは著しく困難だと認められるような緊急やむをえなくぃ特段の事情があるというケースという場合だね」
「そうした場合に限って、必要な限度で自力救済が認められるということになるね」
「滝川一益さんの場合はちょっと緊急やむを得ないとまでは言えないかな」
7月4日(木曜日)旧暦5月24日、癸酉、仏滅、九紫火星
『公訴時効』
「公訴時効というのは、犯罪発生後一定期間経過後の起訴を禁止する制度(250条以下)のことね」
「少し紛らわしいけど、刑事法の時効には確定判決前の@公訴の時効と確定判決後のA刑の時効(刑法31条以下)があるね。で、この公訴時効の本質っていうかコアっていうと」
「この制度の本質っていうのは、この制度の持っている機能や目的から考えるべきよね。そうすると、一定期間訴追されていないという事実状態を尊重して国家がもはや訴追権を発動しないことにあるといえるわ。だから、被告人の地位の安定っていうのは、そういう時効制度の反射的利益に過ぎないわ」
「その点には、いろいろと喧喧諤諤だね。つまり、時間の経過によって実体法上の刑罰権が消滅するとか、時間が経過しているということが訴訟上の障害となるというような考え方だけど」
「でも、どれも国家の訴追という観点からだけでしか捉えていないわ」
7月3日(水曜日)旧暦5月23日、壬申、先負、一白水星
[石橋君] 「佐々木道誉君ってちょっぴり老けた高校生がいるんです。この佐々木道誉君、ちょっとばかりずる賢くて、自分の買ったばかりの400万画素のデジカメを担保にしてですね」
「お金を借りたわけね」
[石橋君] 「ご名答。もともと老けているから何もしなくても、僕なんかは初めて見たときは25歳くらいに見えたもんです。でも、お金を借りるときに、マイルドセブンなんかを加えて、高校生であることを隠したので、」
「お金を貸した人はよもや高校生だとは思いもよらなかったと」
[石橋君] 「これまたご名答。で、佐々木道誉君は自分は未成年だから契約は取り消せるんだと。それも、お金は全部使ってしまったそうです」
「佐々木道誉君はお金を借りた人、えーと、誰?」
[石橋君] 「楠木さんです」
「その岩橋さんと消費貸借契約とデジタルカメラへの担保権設定契約を結んでいるのよね」
「佐々木道誉君は高校生、つまり、未成年者だから、このような契約について佐々木道誉君はは取消ができそう(4条2項 )でね。でも、悪がき小僧の佐々木道誉君は契約時に自らが未成年者であることを黙秘している。成人だとは一言も言ってはいないけど態度で騙しているわけだ」
「ということは佐々木道誉君の取消は制限されるのではないかということが、『詐術( 20条)』の意味と関連して問題となるのね」
「とはいえ、単に制限能力者であることを黙秘しているのみでは『詐術』にあたるとすることはできないね。というのは、能力者であるかどうかをあえて契約の相手に言うとは考えられないからでしょ」
「でも、『詐術』というのを積極的に詐欺の手段を用いたというような場合だけに限るとするなら、相手方の保護が十分とはいえないわ。だから、黙秘も特段の事情が認められる場合には『詐術』にあたると考えるべきね」
「つまり、黙秘が行動と相まって、能力者であると誤信させたり、あるいは能力者であるとの誤信を強めるという事情が認められる時には黙秘、黙っているということも『詐術』にあたるというわけだ」
「そうこうして考えると、佐々木道誉君は未成年であることの黙秘に加えて、マイルドセブンを銜えていたために、楠木さんは佐々木道誉君が未成年者ではないという誤信を強めているわ。そして、佐々木道誉君にはこういう誤信をさせようという意図があるのね。こうした事情から『詐術』はあったというべきね」
[石橋君] 「ということは、悪がき佐々木道誉君はもはや契約、法律行為を取消すことはできないということですね」
[年表]
■1912年(大正元年):通天閣開業
7月2日(火曜日)旧暦5月22日、辛未、友引、二黒土星
[石橋君] 「自分のものであっても時効取得を主張することはできるんですか」
「162条が『他人の物を占有したる者』としているからだね」
「時効制度の趣旨というのは、」
[石橋君] 「長期にわたって存続している事実状態の尊重です」
「それ以外にも、真の権利者などを保護することでもあると考えられるよ」
「債務から解放されたはずの人とかもね」
[石橋君] 「そうすると、自分の物でも、自分の物だということを証明することが困難だというような場合には、時効取得を主張してもいいわけですね」
「その通り」
[事件簿]
[最高裁第三小法廷、金谷利広、奥田昌道両裁判長]公共工事の談合を巡る住民監査請求が、1年間の申し立て期間によって制限されるかが争われた3件の住民訴訟の上告審で談合による自治体の損害に関する監査請求については「請求期限の適用を受けない」との初判断を示し一審に差し戻し。
[佐賀県警]殺人罪の時効が8日に迫る『佐賀県北方町連続3女性殺人事件』で元運転手松江輝彦容疑者(39)を再逮捕。
[年表]
■1915年(大正4年):東京市小石川区の西尾正左衛門、「亀の子たわし」特許取得。
7月1日(月曜日)旧暦5月21日、庚午、先勝、三碧木星、釜蓋朔日(かまぶたついたち)
法律上の争訟の2要件、事件性・争訟性の存在理由はどこにあるのでしょうか?
「司法権というのは、具体的な事件について、法を適用し宣言することによって、これを解決する国家作用と言えるわ」
「事件性・争訟性が要件とされるわけだよね。裁判所法3条1項が『法律上の争訟』と規定するのは、この表れといえるね」
「つまり、@当事者間に具体的な法律関係ないし権利義務の存否に関する争いがあり,A裁判所が法令の適用により終局的に解決しうべきものであることが必要とされるのね」
「それが何故必要なのかということだね」
「『当事者間に具体的な法律関係ないし権利義務の存否に関する争い』という要件が必要なのは、裁判所に司法権を委ねることの目的っていうのは、法によって認められる国民個人の権利・自由を保障するってとこにあるわ。
そう考えると、国民個人の権利、自由をめぐる何らかの社会的紛争が生じたという場合に、これに法を解釈・適用することによって、その紛争を裁定し、解決することが裁判所の任務といえるわね。
言い換えると、、裁判の目的っていうのは、抽象的な法の解釈・適用自体ではないわ」
「だから、紛争当事者間に法律関係ないし権利義務に関する現実的・具体的な利害の対立が存在することが必要なわけだね」
「そうよ、一方、そのような性質を備えない抽象的・一般的ないし仮定的な紛争には司法権は及ばないと考えられるわね」
「『裁判所が法律を適用することにより終局的に解決することができる』という要件が必要なのはどう説明できるかな」
「そもそも、裁判所が法の定める手続、紛争解決基準に則って、法の専門家である裁判官が主体となって判断して、紛争を解決する機関よね。そういう裁判所の紛争解決機関としての特性に合致するのは『法律を適用することにより終局的に解決することができる紛争(紛争解決の一回性、終局性)』だわ」
「そうだね。それ以外の紛争なんかは、裁判所が判断を下すとしても、当事者や社会に対する説得性がないから、およそ紛争の終局的解決を図ることはできないね」
[事件簿]
[愛知県警半田署]愛知県武豊町六貫山、アルバイト竹内由紀さん(18)が自宅前の駐車場で胸などを、悲鳴で駆けつけた姉の英里さん(23)も左腰を刺され、由紀さんが死亡した事件が発生。無職の男(26)を殺人未遂容疑で緊急逮捕し、殺人容疑に切り替えて取調べ中と発表。
[静岡地裁]『美術商久保美恵子さん殺害事件』(2000年11月)で被害者を殺害切断し、静岡県大井川港に遺棄したとして強盗殺人などの罪に問われた元設計事務所経営大石一敏被告(49)に殺人罪と窃盗罪を適用し無期懲役の求刑に対して懲役18年を言い渡した。
[神奈川県警捜査2課]サッカーW杯決勝戦で約200枚分のチケットの座席番号が重複していた事件に関して、本物のチケットの一部を変造した可能性が高いとして有価証券変造事件として捜査すると発表。
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