[判決言渡前における142条違反の効果]
 判決の言渡前において、二重起訴の禁止に違反して訴えの提起がなされた場合に、二重起訴の禁止は訴訟障害事由であるとして、不適法として却下すべきであるとする考え方もある。
 しかし、二重起訴の禁止に違反して提起された訴えが、前訴と請求の趣旨を同じくするという場合には訴えを不適法として却下すべきであるものの、請求の趣旨を異にするような場合には弁論の併合を命じるか、あるいは手続を一時停止すべきであると解する。
 その根拠として、第一に、二重起訴の禁止に違反して提起した後訴を前訴と同一の訴訟手続内で審理すべきであるとすることによって、審理の重複、裁判の矛盾を回避することが出来る。
 第二に、請求の趣旨が異なる場合の後訴を不適法として却下すべきであるとすると、原告は改めて訴えの変更あるいは反訴の提起をしなければならず煩雑である。加えて、その場合、改めて印紙を添付しなければならないし、時効中断の利益を失うということが挙げられる。