[営業譲渡の広告]

 商人が営業の譲渡を受けたとしても当然に譲渡人の営業上の債務まで引き受けるものではありません。債務引受がなされない限りは譲受人は譲渡人の営業上の債務の弁済の義務を負わないはずです。
 しかし、営業譲渡がなされると、営業上の債権者は営業上の債務もまた移転されたと考えるのが通常だといえます。そこで、このような善意の債権者の信頼を保護するために商法は商号が続用された場合には営業の譲受人は営業上の債務の弁済の義務を負うということを規定しました(26条)。
 商号の続用がない場合には原則として営業譲渡の譲受人は営業上の債務の弁済の義務を負わないというのが原則です。しかし、ここでも、商法は例外規定を設けて、債務引受の広告をなしたときは弁済の責任を負う(28条)としています。これは、禁反言および外観を信頼した善意の債権者の信頼を保護するためです。
 そこで、単に、営業を譲受けたとする旨の広告を28条にいうところの債務引受の広告ということが出来るのかが問題となってきます。この点については、そもそも、一方的な意思表示である債務引受の広告によって営業上の債務の弁済の義務を負わせるので、債務引受の広告といえるかどうかに関しては慎重でなければなりません。従って、単に営業を譲受けたというだけの広告は28条にいう債務引受の広告とはいえないと考えるべきでしょう。