[商人資格の取得時期]
 いつから商人として認められるのかということは、いつから付属的商行為に対して商法の適用があるのかを決定します。そこで、商人資格の取得時期はいつなのかということが問題になるわけです。
 商人資格の取得時期を考えるに当たっては、商人であるということを主張するものの利益と取引の相手方の利益の双方の利益の調和を図る必要性があります。そこで、次のように段階的に決するのが妥当でしょう。
 まず、(1)営業意思が開業準備行為によって主観的に実現されたにすぎないという段階では、その主観を外形的・客観的に判断するということは出来ません。従って、取引の相手方保護の見地から、行為者からは商人資格の取得を主張するということは出来ないでしょう。
 次に、(2)営業意思が相手方に認識されうべき段階では,公平の観点から,行為者は営業のための行為であること及び営業意思が相手方に認識されうべきことを証明した場合に商人資格の取得を主張できると解するべきでしょう。
 さらに、(3)商人であることが一般に認識されうべき段階に至れば、行為者保護の見地から、その者の行為について附属的商行為の推定が働いて(503条2項)、相手方が営業のためになされたものでないことの証明をしない限りは行為者は商人資格の取得を主張できると考えることが出来るでしょう(段階説)。