[択一的競合]
XYが(意思の連絡なく)Aを殺そうと同じウイスキーに致死量の毒を入れ、Aが死亡した場合。

(×) Xの行為 → Aは死亡 ━━┓
   +              ┣━━┓
(×) Yの行為 → Aは死亡 ━━┛  ┃
                     ↓
                  条件関係がない ← 条件関係の公式
                     ↓
         ┏━━━━━━━━  不合理
         ┃         ∵XYが致死量の半分の毒しか入れて
         ┃         いない場合、二人とも条件関係が認め
         ┃         られ、殺人既遂となる。
         ↓       
       修正することが妥当
         ↓
       いくつ可能行為のうち、すべての場
       合を除けば結果が発生しない場合、
       すべての条件につき条件関係を認める
       ∵ 条件関係=結果からどの行為までさかのぼれるかを図るための道具
                 ↓
              現実的に生じた結果をXY双方に帰責すべき

 XYは独立してAを殺害しうる行為を行って、Aの死亡という結果を発生させています。このような場合に、XYを殺人未遂とするのは国民の一般常識に沿うものとはいえないでしょう。また、例えば、XYの双方が致死量に満たない程度の毒物を入れた場合には重畳的因果関係として条件関係が認められて殺人罪の既遂が成立することと比べても均衡に失します。
 そもそも、条件関係という概念は発生した結果を誰の行為に帰属させるのが妥当かどうかということを判断するものです。その趣旨からすると、択一的競合の場合においては、条件関係を形式的に適用するのではなくて、複数の行為を一括して取り除いたならば結果が発生しないという関係が認められる場合には,全体としてみれば,いずれの行為にも結果との条件関係が認められるというように条件関係を修正すべきだといえます。
 従って、XYともに殺人既遂罪が成立します。(全体的考察説)