[相当性判断の方法]

因果関係の存否=当該状況下の行為+結果の問題
                ↓
        ┏━━━∴ 内心によっては左右されない
        ┃   
                ↓
┏━━━━━特殊な事情━━━┓
┃                      ↓
┃         認識して行う行為者が存在する可能性あり
┃         ∴特殊事情を前提として結果発生の危険性判断すべき。
┃             ↓
┃     ┏━━ 相当性の判断
┃     ┃   =行為時に発生した全事情
┃     ┃       +
┃     ┃    予見可能な行為後の事情
┣━━━━━┛
┃
↓
行為後の特殊な事情の介入の場合
 ┃
  ┣━ 実行行為に存する結果発生の確率の大小
  ┃
  ┣━ 介在事情の異常性
  ┃
  ┗━ 介在事情の結果への寄与の大小

 判例は、「あれなくばこれなし」という条件関係さえあれば因果関係を肯定しています。しかし、こうした因果関係は論理的に無限に近く広がってしまうというおそれがあります。また、故意の内容通りの結果は生じたものの、その結果に至る経過が異常だという場合においても既遂となってしまという不合理な結論になってしまいます。
 そもそも、刑罰の正当化根拠というのは法益保護にあります。その観点からすると、結果の発生に条件関係を持っている全ての行為というものを既遂として取扱うのは妥当とはいえません。既遂とすべきなのは、当該行為から当該結果が発生するのが相当であると認められる場合に限るべきでしょう。
 次に、この「相当性」についてですが、広義の相当性といわれる、行為時における結果発生の可能性の判断でいうところの相当性については、行為時に発生した全事情・予見可能な行為後の事情を基礎として判断すべきだといえます。これは、刑法上の因果関係というものは本来客観的に決定すべきであって、行為者の内心(主観的事情)によって因果関係が左右されるというのは不合理であるからです。
 但し、以上のように考えるとしても、因果経過が相当であるか否かの具体的基準は導かれません。これは、特に、行為時において特殊な事情が介在したというような場合には、「予見可能な行為」という基準だけでは十分とは言えません。
 こうした行為時において特殊事情が介在したというような場合においては、具体的には次の3つの点を考慮して判断するのが妥当といえます。
 その3点とは、すなわち、@実行行為に存する結果発生の確率の大小、A介在事情の異常性、B介在事情の結果への寄与の大小です。