[地方自治 regional autonomy]
■地方自治

  第92条 地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。

+■地方自治の意義
  (1)地方自治保障の趣旨 民主主義と権力分立原理
民主主義(国民主権)的意義中央の議会制を補完し、「民主主義の学校」としての役割を果たす。
自由主義(権力分立原理)的意義中央の統一的国家権力の強大化を抑止して、権力を他方に分散させる。

  (2)地方自治保障の性質 承認説、固有権説、制度的保障説
固有権説地方公共団体の自然権的・固有権的、すなわち前国家権的な基本権の保障とする考え方。この考え方をとった場合には、主権の単一性、不可分性を無視するということになる。
伝来説地方自治は国家の統治権に伝来し、国の政策的自制に基づく承認ないし国の委任に根拠するものであるとする考え方。この考え方によると、地方団体は、国家の統治機構の一環として位置づけられるということになり、国(中央)は地方自治保障の範囲を法律によって定めることができるということになる。従って、「地方自治の本旨」に特別の法的意味を認めないことになってしまい、憲法第8章で特に地方自治を規定した意味を没却するものだという批判がある。
制度的保障説(通説)地方自治の保障とは、地方自治という歴史的・伝統的制度を保障したものであるとする説。この考え方によると、「地方自治の本旨」は、国の法律によっても侵害できない地方自治制度の本質的ないし核心部分を意味するということになる。

  (3)憲法は都道府県と市町村の二重構造を保障したものか ?
  (4)『地方自治の本旨』(§92)の内容 住民自治、団体自治の意義
   『地方自治の本旨』(§92)=法律を持ってしても侵害できない本質部分。立憲民主制の維持という観点からすると、「地方自治の本旨」としては、住民自治と団体自治の2つが帰結されることになる。
住民自治地方の政治・行政が住民の意思に基づき行われること。これは、国レベルでの代表民主制を補完するものといえる。具体的には、地方公共団体の長、議会の議員の直接選挙(93条)や一の地方公共団体のみに適用される特別法の住民投票(96条)そして直接請求の諸制度に表れている。
団体自治地方自治が国から独立した団体に委ねられ、団体自らの意思と責任のもとでなされるということ。自由主義的要請である。94条に具体化されている。

  (5)『地方公共団体』(§93)とは 特別区は地方公共団体か cf.判例の要件
  (6)特別法の住民投票 趣旨、住民投票を要する特別法とは ?
  (7)直接民主的方法の導入の可否 国政との差、住民投票

+■条例
  (1)条例(§94)の意義:地方自治体がその自治権に基づいて制定する自主法
  (2)条令と法律留保事項との関係
   @財産権(§29T)
   U罰則制定権(§31、§73E) 憲法直接授権説、一般的包括的授権説、限定的法律授権説
   B課税権(§30、§84)
  (3)『法律の範囲内』(§94) 意義、上乗せ条例、横だし条例の合憲性の判断基準(徳島市公安条例事件)
   cf.基準について「徳島市公安条例事件判決」