[生存権]
■生存権

第25条【生存権,国の社会的責任】 (1)すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
 (2)国は、全ての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

  (1)生存権(§25T)の法的性質 プログラム規定説、抽象的権利説、具体的権利説
プログラム規定説25条は国の政治的目標ないし政治的道徳義務を規定したものとして法規範性を否定する説。権利の具体的内容とその実現方法が明確でないということを根拠とするが、憲法が明文で「権利」と規定している以上、法規範性を否定することは妥当ではないという批判がある。
抽象的権利説(通説)法規範性を肯定する。しかし、直接25条1項を根拠として国の立法や行政の不作為の違憲性を裁判で争うことは認められない、つまり裁判規範性は認められないとする説。生存権の内容は、抽象的で不明確であるということから、25条を直接の根拠にして生活扶助を請求する権利を導き出すことは難しいということを根拠とする。この見解では、立法不作為違憲確認訴訟は認められない。
具体的権利説直接25条1項を根拠として裁判所の給付判決を求めうることは出来ないとしつつも、国が25条を具体化する立法をしない場合に国の不作為の違憲確認訴訟を提起できるとする説。25条1項の権利内容が行政権を拘束するほどには明確ではないにしても、立法権と司法権を拘束するほどには明確であるということを根拠とする。しかし、違憲判決が出された場合に立法を義務づけることが可能かという疑義がある。

生存権具体化立法についての違憲審査基準
判例25条1項を救貧施策、2項を防貧施策として分離して考え、前者については「厳格な合理性の基準」が妥当するが、後者については緩やかな「明白性の原則」が適用されるとする。
芦部説少なくとも平等原則に反するかどうかという形で生存権の問題、具体的には福祉受給権の問題が争われた場合においては、議員定数是正の問題の場合と同様、「実質的な合理的関連性の基準」「厳格な合理性の基準」によるべきとする。

  (2)裁判的救済方法のあり方 立法不作為の場合
   ※@直接請求 A立法不作為違憲確認訴訟 B立法不作為に対する国賠訴訟
    C生存権保障立法の基準切り下げ措置に対する無効主張
  (3)§25TとUの関係 両者は分離して考えることはできるか
25条1項・2項の構造論
25条1項・2項分離論(堀木訴訟控訴審判決)2項は国の事前の積極的防貧施策をなすべき努力義務のあることを規定し、1項は2項の防貧施策の実施にもかかわらず、なお落ちこぼれた者に対し、国は事後的・補足的・個別的な救貧施策をなすべき責務のあることを宣言したものと解し、2項については広く立法府の裁量に属するとする説。この説に対しては、1項と2項を分離する根拠がないという批判や、1項を抽象的権利とすることで2項の権利性を弱める結果となっているという批判がなされる。
1項2項一体説(通説)1項2項を一体的に捉え、1項は生存権保障の目的ないし理念を、2項はその達成のための国の責務を定めたものであるとする説。

  (4)問題となった事件 朝日訴訟、堀木訴訟